2017年5月14日日曜日

アジア・オセアニア会議模様 ⑭ 「喜び」と「兄弟愛」

 第5回目アジア・オセアニア会議の概要は、すでに報告した通りですが、フランシスカン霊性の重要な一つに「喜び」と「兄弟愛」があります。フランシスカンの集まりは、真剣な話し合いや討議とともに、兄弟姉妹たちとの交流も大事なことです。


 今回のアジア・オセアニア会議においても、毎日、ミサをあげ、一緒に祈った他、毎日、その日の会議終了後、午後8時より、Franciscan Joy、つまり、兄弟姉妹たちとの交流会が、ある晩は、インド+パキスタン兄弟会によって、またある晩は、インドネシア兄弟会によって、さらに、別の晩は、韓国兄弟会によって、また、フィリピン兄弟会によって、そして、中国+台湾+香港兄弟会によってダンスや歌などが披露されました。残念ながら、日本からの会議参加者は私一人でしたので、中国+台湾+香港チームに混ぜてもらい、私も、日本の歌などを紹介しました。


 また、会議半ばの日曜日には、中休みとして午後に兄弟姉妹たちとTanah Lot Temple と呼ばれる海岸線の美しい場所に立つヒンドゥー教寺院を訪問したり、すべての会議終了後、帰国前に、会議が開催されたバリ島デンパサール市の中心にあるBajra Sandi Monument、エメラルドブルーの海岸のPandawa Beach、そして 絶壁に立つヒンドゥー教のUluwatu Templeとその野外劇場での伝統舞踊ダンスの鑑賞などをしました。


 兄弟姉妹との楽しい交わりの一端を添付写真などから感じ取って下されば嬉しいです。以上で、第5回在世フランシコ会アジア・オセアニア会議の報告を終わります。


                                                  報告 竹田文彦

2017年5月8日月曜日

アジア・オセアニア会議模様 ⑬ 「少数者対する配慮」

第5回アジア・オセアニア会議の最後の課題は、「少数者対する配慮」です。

 多民族国家における少数民族、移民、宗教的少数者、そして、話題となっているLGBTなどの性
的少数者など、とかく差別や迫害、ヘイトスピーチなどの対象とされがちな人々の人権、権利の擁護などの問題です。このような問題と特に取り組んでいる、今回の会議開催国のインドネシア兄弟会、パキスタン兄弟会、タイ兄弟会の現状と取り組みが紹介されました。

  インドネシアは、多民族国家でもあり、宗教の自由は保証されているものの、87.18%を占める大多数のイスラーム教徒に対して、6.96%のプロテスタント、2.91%のカトリック、1.68%ヒンドゥー教、0.72%仏教、0.05%儒教、0.05%その他となっている。そんな中で少数者に対する宗教的非寛容や宗教的理由による暴力や虐待が問題になっているし、イスラーム教徒による政治的圧力やポピュリズムの台頭などが問題となっている。

 タイ王国の場合は、95%の仏教徒、イスラーム教徒が、3.8%、キリスト教徒0.5%、ヒンドゥー教徒0.1%となっている。また、タイに住んでいる2,000人のインド人は、ヒンドゥー教徒とシーク教徒に分かれている。タイにおいては、多数派の宗教の信者も少数派の宗教の信者も認められており、国王によって保護されている。国王夫妻が、ローマにヨハネ・パウロ二世を表敬訪問したり、国王がウボンラーチャターニーカトリック司教区を訪問したりしたこともあり、仏教国タイ王室とカトリック教会の近しい関係が見てとれる。まさにフランシスコの宗教間対話の精神のモデルとも言える。宗教の違い、世代の違いなどを超えて、人間の基本的生の次元における喜びや悲しみ、苦しみを分かち合っていく心こそ重要であると感じた。なお、タイにおける問題点としては、霊的補佐役が根本的に不足していること、新たな会員がなかなか獲得出来ないなどがある。(報告して下さったのは、霊的補佐としてタイに赴任されたフィリピン人のシスターです。)

 パキスタン兄弟会の場合、基本的にイスラーム教徒の国。特に、地域によりかなり過激なイスラーム教徒がいたりする。遠隔地の兄弟会を訪れるのは交通手段など非常に難しく、また、排他的イスラーム教徒が支配している地域では危険も伴う。そんな非常に厳しい状況の中でパキスタン兄弟会は、対話の促進に努めてきた。

 以上のような報告がなされました。アシジのフランシスコは、周辺に追いやられた人々、弱者の側に立ち、自らも小さい者として生きられました。今日、一方でグローバル化が進み、多様な在り方が認められつつある一方で、国を追われた難民が出たり、格差が広がり、また自分と異なるものに対する嫌悪やヘイトスピーチ、差別、迫害などが無くなりません。在世会員として、師父にならって少数者のために何が出来るか、報告を聞きながら考える必要を感じました。

以上が、第5回アジア・オセアニア会議において議論された課題です。すべての会議のまとめは、後日、出される予定になっておりますが、概要を報告させて頂きました。
なお、朝のミサから晩の祈りまで報告しましたような在世フランシスコ会を取り巻く様々なテーマについて話し合いとグループ討議がずっと繰り返されたわけで、大変疲れましたが、とても勉強にもなりました。国によって在世会の在り方は、かなり異なっていますが、誓約を立て、在世フランシスコ会会員となることは、世界の100カ国以上に広まる在世フランシスコ会の一員、兄弟姉妹の一人になることを意味しています。会員の皆様が、在世会への召命の喜びととも、責任も担っていることを改めて意識するようにしましょう。


写真(上1番目)は、台湾、香港、日本からの参加者たちです。
                                                レポート 竹田文彦

2017年5月2日火曜日

アジア・オセアニア会議模様 ⑫ 「高齢化の問題」

 4日目午後のテーマは、日本の在世会にとっても切実な問題となっている会員の高齢化の問題です。


 会員の高齢化はどの国でも深刻なようで、オーストラリア兄弟会、ニュージーランド兄弟会、韓国兄弟会の現状と高齢化に対するそれぞれの取り組みが紹介されました。
  オーストラリア兄弟会の場合、キリスト教徒は、人口の61.1%、無宗教22.3%、不明9.4%、仏教、イスラーム教がそれぞれ2.5%、ヒンドゥー教1.3%、その他となっており、誓約会員596人中、集会出席者数が362人、誓約したが、様々な理由により集会に出席しないか、出来ない会員が234人、養成中の会員が38人おりますが、兄弟会数は、28だそうです。
 会員の年齢分布は、集会出席者362人中、30歳未満の会員はおらず、30歳から50歳未満までが30人、50歳から70歳未満が116人、70歳以上が216人。集会に出席しない会員234人中でも、30歳未満の若い会員はおらず、30歳から50歳未満は4人、50歳から70歳未満が30人、70歳以上が200人と、完全に高齢化しており、さらに高齢の会員、それも集会に出席出来ない会員が増えていく見込みです。


  このような厳しい状況の中で、オーストラリア兄弟会は、会を維持していくための方策として、
オーストラリア兄弟会の『規則』に、活性化担当評議員についてその役割を記載する。
すべての段階の評議会、各地、地区兄弟会に活性化担当評議員をおく。
『会憲』第45条に基づいて、すべての兄弟姉妹が会の活性化の責任を認識するとともに在世会への志願者の開拓をする。
高齢の会員は、彼らの経験を若い世代の会員に伝える。
若者の在世会へのリクルートのために具体的な方策を考える。
インターネット、フェイスブックなど電子メディアを活用する。
地域のカトリック教会、修道会と協力していく。
リクルートにおいては、様々な若者を惹きつけるツールや物品を活用する。パワーポイント、ティシャツ、アニメーションなど。
各地兄弟会レベルでもただ訪問者が来るのを待つのではなく、通常の集会と別に、会員開拓のための集会を開く。
兄弟会、そして会員の一人一人が喜びをもってフランシスカンとしての召命を生き、その生き方によって人々を惹きつけなければならない。
キリストを中心とした福音的生き方の実践、兄弟姉妹相互の兄弟愛、深い祈りと霊性、これらのための会員の生涯養成。


 ニュージーランド兄弟会の場合も、70歳以上が会員の50%を占め、69歳から65歳が30%、64歳以下の会員は、わずかに20%で、明らかに会員の高齢化が進んでいる。その状況に対して、
在世会会員は、それぞれの兄弟会、それぞれが属している社会において、高齢化の問題と取り組む義務がある。
フランシスカンの小中学校では、子供たちにアジジのフランシスコについて話したりする機会を設けてもらったりしつ、フランシスカン霊性を広める努力をする。
高齢の会員は、積極的に自分たちの経験を若い会員たちと分かち合うとともに、自分たちのやり方を単に維持させようとはせず、若い会員の考えや発想を取り入れる。
さらに高齢で集会に容易に参加出来ない会員に対しては、集会の様子を知らせる会報を送ったり、時には、自宅や病院を訪問してあげることにより、終生在世フランシスコ会会員として召命を全う出来るように助ける。
高齢の会員を孤立させない。


韓国兄弟会の場合は
 誓約会員13,764人、うち35歳以下は、1.17%、35歳から49歳が、6.39%、50歳から65歳が、49.2%、66歳以上が、44.1%。とやはり高齢化が進んでいます。
  高齢化の理由としては、若者たちは、あまりに学校や地域の教会活動などに忙し過ぎる、また、若者たちは、あまりに高齢な会員と在世会に加わり、一緒に活動することに多少躊躇してしまうなどがあげられ、若い会員の獲得は困難となっている。
 これらのことにより、兄弟会のために奉仕してくれる新会員を見付けるのは難しく、また高齢の会員は、身体的理由により集会に参加するのも困難になり、ましてや、JPICに関わる活動などは、ほとんど出来ないことになっている。

対策としては
55歳以下の方の在世会への勧誘を積極的に行う。
召命の識別を強める。
ユフラ会員が、そのまま在世会員になってくれるように働きかける。
若者たちの召命のために、リトリートやワークショップを企画する。

 努力の結果
高齢化の進展を防ぎ、65歳以上の会員が全在世会員に占める割合は、50%のままに留まり、入会志願者の大半が、若返ることに成功した。(志願者の19.7%、約2割が35歳から49歳)

  つまり、積極的な若い会員獲得のリトリートをしなければならない。もちろん、他方、高齢者の会員は、私たち在世会にとって宝物であり、これまで一生懸命活動し、今は、祈りにおいて会を支えてくれているので、出来る限り頻繁に彼らの家や病院を訪問してあげるべきである。

 以上、3つの国の高齢化の状況とそれに対する対策を聞きましたが、日本の高齢化の状況は、さらに深刻だと感じていますので、副総長に改めて日本の状況についてのアドバイスを願ったところ、次のような回答が返ってきました。
  「まず、高齢化は、世界のどこでも程度の差こそあれ、起こっている。私は、副総長として、それを高齢化の問題と呼ぶこと自体、あまり好きではない。それは、むしろ、新会員、特に若い会員をいかに開拓し、リクルートするかの問題だと思う。高齢化したからと言って、ただ若い会員が来てくれることを祈ったり、待っているなら、それは、兄弟会としての死を待っていることに過ぎない。それこそ、祈りは、高齢の会員に任せておいて、評議会の中の比較的若い会員(50代以下)や気持ちの若い会員が中心となって、地域や兄弟会を越えて、若者たちの在世フランシスコ会への召命を開拓するために、様々な新しい企画を新しい発想で行いなさい。
 無理だとして諦めてしまうのは人間の考えであり、神の業は、全く違う。奇跡すらも起こせる。そのことを信じて、日本在世会は、即動きなさい!弱気になってはダメ。」

  副総長のチェリートさん(ベネゼエラ人女性)は、このようにとても、強い調子で励まして下さいました。
                                                 レポート 竹田文彦